生殖医療科

検査

血中ホルモン検査

排卵に関係するホルモン値に異常がないか、また最近では、卵巣の機能がどれだけ保たれているかを調べることができます。性周期や排卵日の予測にも用います。

精液検査

射精された精液中の精子の状態を見る検査で、男性不妊を調べる上では必須となる検査です。4~7日間の禁欲後、マスタベーションによって容器に採精し、提出していただきます。精液の量、1ml 中の精子の数、運動率などを調べます。

通水検査

子宮の入り口からカテーテルを用いて水を注入し、卵管の通過性や狭窄の有無を調べます。卵管を広げる効果があり、治療としても用います。

子宮卵管造影検査

子宮の入り口からカテーテルを用いて、造影剤を注入しレントゲンを撮る検査で、子宮腔の形、大きさ、卵管の通過性、狭窄の有無などがわかります。通水検査と異なり、左右差や卵管周囲の癒着の診断にも用います。当院では原則としてこれを行います。

抗精子抗体検査

抗精子抗体は、精子を外部からの異物とみなして攻撃し排除してしまう抗体で、女性側にそのような抗体があると精子を拒絶して、不妊の原因となります。抗体価の高さにもよりますが、強陽性の場合には体外受精が必要となります。
 

治療方法

タイミング法

粘液の状態や卵胞の大きさ、血中ホルモン値などから排卵日を正確に把握し、その日に性交を行う事で自然妊娠を目指す方法です。

排卵がない場合や状態がよくない場合には、卵胞の発育と排卵をうながすよう、排卵誘発剤を併用する方法もあります。

AIH(人工授精)

マスタベーションによって得られた精子を、雑菌や白血球、未熟な精子など受精に不利な成分を取り除くための洗浄処理を行い、さらに濃縮をして子宮内にカテーテルで注入する方法です。人工といっても、精子と卵子が出会い、受精、着床、妊娠に至る過程は自然妊娠と同じです。タイミング法と同様に排卵日を把握し、処置を行います。排卵誘発剤などを併用する場合もあります。

cIVF(体外受精)

卵管性不妊や軽度の男性不妊など、体内での受精が難しいと考えられる場合や、タイミング法や AIH などを行っても妊娠が成立しなかった場合、さらには子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群などにも適応となることがあります。採卵によって得られた卵子に、採精によって得られた精子を培養皿上で振りかけることにより、体外で受精させる方法です。顕微授精と比べると、より自然に近い状態での受精が可能です。

ICSI(顕微授精)

不妊治療の機器
ICSI 顕微鏡写真
専用の針の中に精子を入れて、直接卵子内に注入します
不妊治療の機器
ICSI 実施の様子
専用の顕微鏡(マニピュレーター)を使用します

cIVF と同様に体外で受精を行う方法です。顕微鏡下で卵子に針を刺し、精子を注入します。重度の男性不妊や受精障害があり、cIVF でも妊娠が難しい場合に適応となります。
 

当院の採卵周期スケジュール

採卵周期のスケジュール

※実際の投与ホルモン量、刺激日数は患者さんによって変更することがあります。

上の図は当院でよく行われる GnRHアンタゴニスト法の場合です。患者さんの状態に応じてShort法PPOS法などに工夫・変更することもあります。

  1. 体外受精を行う周期の月経が始まったら、月経開始から約3日目後より排卵誘発剤(FSH 製剤やhMG 製剤)の注射を打ち始め、卵巣を刺激します。卵胞の発育は、定期的に外来で経膣超音波によって計測します。
  2. 直径 14 mmよりも大きく発育した卵胞が出来たら、勝手に排卵が起きないようにするため、GnRH アンタゴニストの注射も一緒に打ち始めます。
  3. 直径 18 mmよりも大きく発育した卵胞が出来たら、採卵日が決まります。採卵の2日前の夜 21:30 に排卵を促す hCG の注射を行い、採卵前日の午後に入院となります
    ※OHSSの発症が懸念される場合には、GnRHアゴニストによる排卵誘発とすることもあります。ただし、発育卵胞の数が少ない、あるいは全くない場合は医師と相談の上、採卵を中止させていただくこともあり得ます。
  4. 入院の翌日朝 8:00 より静脈麻酔で患者さんを眠った状態にして、超音波を見ながら発育した卵胞を穿刺し、卵子を取り出します。卵胞発育があっても、卵子が獲得できないこともあります。
  5. 旦那様またはパートナー様は事前に滅菌カップをお渡しするので、そこに精子を採っていただき、採卵当日の朝(8時~9時)に3階南病棟で精子を提出してください。
    ※必ず夫婦お二人の氏名をカップに記入してください!
  6. 通常の体外受精(cIVF)では精子の数や運動率を計測したのち、濃度を調整してから卵子に振りかけて、培養を開始します。一方、顕微授精(ICSI)を行う場合は、精子を調整後、採取した卵子から余分な細胞を除去し、細い針を使って精子を注入します。
    ※当日の採卵結果、精液所見により希望の受精方法に沿えない可能性があります。
    ※未熟卵子や変性卵子は受精操作することはできません。
  7. 患者さんは採卵後2時間程度安静にした後、再度出血等の異常がないことを確認し、退院となります。
  8. 採卵の翌日に、受精の確認を行います。
  9. 採卵後5-6日目に胚盤胞まで発育した胚を凍結保存します。
    ※新鮮胚移植をする場合
    医師との相談の上、胚を凍結せずに採卵周期に移植を行う場合があります(新鮮胚移植)。受精卵(胚)が得られれば採卵の3日後(Day3分割胚移植)から5日後(胚盤胞移植)の間に胚を移植します。
  10. 採卵後7日目以降に外来を受診し、培養結果を医師から報告します。凍結した胚は次周期以降の融解胚移植周期で胚移植に用います。
     

当院の融解胚移植周期スケジュール

融解胚移植周期のスケジュール
  1. 胚移植の周期では、自然周期もしくはホルモン剤を使って子宮内膜を厚くし、着床しやすい環境を作っていきます。十分な子宮内膜の厚さが確認出来たら、移植日が決まります。
  2. 胚移植当日。移植する胚は培養室にて朝9時ごろから融解処理を行い、移植の時間まで回復培養させておきます。患者さんは午前中に来院していただき、お昼ごろに胚移植を行います。
  3. 約2週間後に、来院していただき、尿検査で妊娠の判定を行います。
     

治療にかかる費用

検査や治療の内容によって大きく変わること、同じ項目でも保険適用の有無により、金額が変わる可能性があることをご了承ください。

ホルモン注射

5~ 15 万円

基本的には外来にお越しいただき注射を行いますが、遠方からお越しの方や、お仕事やご家庭の都合がつかない方には、自己注射も対応可能です。ご相談ください。ジェネリック医薬品の使用の有無や、点鼻薬や経口薬などの投与方法、卵巣の刺激方法によって金額が変わります。

採卵+新鮮胚移植(+顕微授精+胚凍結保存)

13 ~ 24 万円

採卵により得られた卵に体外受精を行い、数日間培養後、発育した胚について新鮮胚移植を行います。卵や精子の状態により顕微授精を行うことや、発育した胚の個数や患者さんの状態により胚を凍結保存することがあります。当院では採卵個数や顕微授精個数、凍結胚個数による加算は行っておりません。

融解胚移植

9~ 12 万円

凍結しておいた胚を融解し、患者さんに移植します。胚の孵化を促すために、ほぼ全例でアシステッドハッチング(AHA)を行っています。

外来でのホルモン注射から採卵・新鮮胚移植を行う1周期で支払う総費用の目安は、約 30 万円前後になります。