概要

「長州総合診療プログラム」

高齢化の進んだ山口県では、へき地をはじめとした多くの地域で医師が不足し、地域住民に対する医療提供体制の確保が急務です。アクセスが不便で、各診療科の専門医が十分に揃っていない地域では様々な住民のニーズに対応し、外来・入院診療から在宅医療や緩和ケアまで、保健・福祉との密接な連携などにも幅広く対応できる「総合診療医」が望まれています。これらの医師の養成には、大病院の研修だけでは十分とは言えず、外来・入院診療、在宅医療、また保健・福祉の研修などを指導医のもと、実際に地域で行うことも必要です。

一方、へき地医療機関では、高度な診療技術に接する機会が少なく、病院医師として不安を感じることもあります。当プログラムは基幹病院とへき地医療機関が相互に補い合うことにより、臓器や疾患を必ずしも限定しない、地域住民の様々なニーズに幅広く対応できる「総合診療医」の養成を目標とします。

超高齢社会、医師の偏在など、現在へき地医療で直面している課題は、間違いなく近い将来日本全体の課題となります。実際にへき地医療を経験した医師を中心にへき地医療機関と連携して、これからの超高齢社会に対応でき、ふるさと日本の地域医療を守る「総合診療医」を育てます。そして、当プログラムにより育った「総合診療医」が、誇りを持って地域医療に貢献し、地域住民に安心と安全を提供することで、総合診療医に対する国民の認知度・信頼度を高め、次世代の総合診療医を目指す若手医師に夢と希望を与えられるように支援します。

〜「総合診療専門医」の養成は以下の3つの理念に基づいて構築されています 〜
  1. 総合診療専門医の質の向上を図り、以て、国民の健康・福祉に貢献することを第一の目的とする。
  2. 地域で活躍する総合診療専門医が、誇りをもって診療等に従事できる専門医資格とする。特に、これから、総合診療専門医資格の取得を目指す若手医師にとって、夢と希望を与える制度となることを目指す。
  3. 我が国の今後の医療提供体制の構築に資する制度とする。

 

基幹施設である山口県立総合医療センターは、県央部(山口・防府医療圏)に位置し、高度急性期医療を担う山口県の基幹病院(504床)であり、山口県からは地域医療支援病院、へき地医療拠点病院、救命救急センター、総合周産期母子医療センター、がん診療連携拠点病院、基幹災害拠点病院に承認されています。また、当院は、30年以上自治医科大学の卒業医師の研修病院として、県内のへき地医療を担う人材育成を行ってきました。第11次山口県へき地保健医療計画に基づき、平成24年に当院と県内へき地医療機関が連携して県内初となる「長州総合医・家庭医養成プログラム」を設置し、県内外から5期にわたり計7名の専攻医を受け入れてきました。平成27年度、プログラムを修了した1期生は、無事「家庭医療専門医」の資格を取得することができました。専門医取得後、へき地医療機関に勤務し、へき地における総合医の医師確保の仕組みとして一定の評価を得ています。

当プログラムの連携施設のへき地病院(8施設)および萩市離島・中山間地域等へき地研修診療所群は、すべて県が指定するへき地(過疎地域自立促進特別措置法、離島振興法、山村振興法の指定する地域)に位置し、各自治体が運営する公立医療機関です。いずれの施設も医師確保は重要な課題として県の修学資金制度の対象医療機関であり、特に地域のニーズに対応できる「総合診療医」を望んでいます。

平成25年、山口県と山口大学が連携して「総合医育成プロジェクト」に取り組み、県内のすべてのへき地公的医療機関に日本プライマリ・ケア連合学会認定の認定医/指導医が揃いました。平成27年、日本プライマリ・ケア連合学会山口県支部(当院:事務局)を設置し、県内の指導医のネットワークを構築し、指導体制の充実を図っています。

へき地医療機関は、アクセスが不便で、各診療科の専門医が十分に揃っていないため、幅広い領域において外来・入院診療、在宅医療などの実践が求められます。当プログラムの専攻医は、各連携施設において、上記のネットワークにつながっている指導医のもとで基幹病院ではなかなか経験できない幅広い診療を経験することができます。

また、当プログラムのもうひとつの特徴は、行政(県、市町村)とも連携していることです。特に「保健、福祉」の分野を行政と一緒に取り組むことで、総合診療医に必要な「地域を診る視点」をより深く経験することができます。

上記の特徴を有する当プログラムは、自治医科大学の卒業医師が義務年限内(9年間)の前半に「総合診療専門医」を取得し、義務年限内の後半に「総合診療専門医」として離島・へき地にて活躍・貢献できるプログラムを目指します。また、修学資金制度の有無に限らず、短期間でもへき地・地域医療に貢献したい気概のある専攻医を受け入れることも可能です。指導医を始めとするスタッフ、行政が一丸となりその実現に向けて最大限サポートし、地域に貢献できるプログラムを目指します。

連携施設

  • 下関市立豊田中央病院
  • 美祢市立病院
  • 美祢市立美東病院
  • 周防大島町立大島病院
  • 周防大島町立橘病院
  • 周防大島町立東和病院
  • 岩国市立錦中央病院
  • 岩国市立美和病院
  • 萩市離島・中山間地域等へき地研修診療所群